モンゴル・キルギスに住む遊牧民の定番の発酵飲料「馬乳酒(クムス)」ってどんな味?日本のカルピスの起源になったってほんと?
今回は、こんな疑問にお答えします。
・馬乳酒は、馬の生乳を乳酸菌と酵母で発酵させた乳酸菌飲料
・アルコール度数が1~3%で、微炭酸
・酸味が強烈で、がぶがぶは飲めない
カザフスタン共和国やキルギスの遊牧民が夏になると必ず飲むと言われている、「馬乳酒(クムス)」。
馬の乳を発酵させたもので、雌の馬が仔馬に授乳する夏の時期にしか作ることができない貴重な飲み物です。
そしてこの「馬乳酒(クムス)」は日本人の発酵文化にも深い関係が。
そこで今回は、馬乳酒「クムス」を徹底解説!
気になる味や作り方はもちろん、栄養・効果効能や日本の人気発酵飲料との関係も整理してみました。
発酵食品にハマり、ダイエットなしで12㎏減。痩せたことをきっかけに腸を愛でる生活に目覚める。重度の便秘から解放され、腸活研究家として活動開始。今では発酵ライフ推進協会通信校校長を務め、昔の自分と同じ悩みを持つ方に向けて腸や菌のおもしろさを発信中。
馬乳酒(クムス)とは?
馬乳酒(クムス)は、その名のとおり馬の生乳を乳酸菌と酵母で発酵させた乳酸菌飲料のことを言います。
=馬の生乳を乳酸菌と酵母で発酵させた乳酸菌飲料(アルコール含)
ヤクーツクで買ったクムスを飲む。#201808自宅 pic.twitter.com/nPTULxKV8p
— xing(日常 (@xing2015) November 30, 2020
主な特徴は以下の3つです。
特徴➁ 夏の間のみ市場で売られる限定品
特徴➂ 日本のカルピスの起源
一つずつ見ていきましょう。
特徴➀ カザフスタン共和国やキルギスに住む遊牧民の栄養補給源
カザフスタン共和国やキルギスの馬乳酒「クムス」は、夏のモンゴル遊牧民の定番ドリンクです。
遊牧民は、馬乳酒「クムス」を1日に約0.5~1.5リットルを飲むと言われています。
遊牧民の食生活は肉食中心で野菜不足になりやすいと言われています。
そこで、彼らの偏りがちな食事をサポートするのが、馬乳酒「クムス」なのです。
カザフスタン共和国やキルギスの馬乳酒「クムス」は、ビタミンやミネラルなどの野菜に含まれる栄養素が豊富で、遊牧民の貴重なビタミン&ミネラル源になっています。
特に多いと言われるのがビタミンCです。
なんと馬乳酒「クムス」に含まれるビタミンCは牛乳の約10倍!
牧場のクムス | 食料品店のクムス | アイラグ | チゲー | 牛乳 | |
---|---|---|---|---|---|
脂肪 | 1.4 | 1 | 1.1 | 1.8 | 3.8 |
タンパク質 | 1.9 | 1.5 | 3.6 | 2.9 | 3.3 |
ビタミンC | 9.96 | 5.3 | 1.8 | 5.8 | 1.0 |
引用:カザフスタン共和国における伝統的祝祭ノウルーズと伝統飲料クムスに関する研究
=モンゴルの馬乳酒
=中国内蒙古自治区の馬乳酒
=カザフスタン共和国やキルギスの馬乳酒
野菜に多く含まれるビタミンの中でも、水溶性ビタミンの一種であるビタミンCは、すぐに体の外に流れ出てしまいます。
=血液などの体液に溶け込んでいる
=余分なものは尿として排出されるため、常に不足しがち
=脂肪組織や肝臓に貯蔵されている
=貯蔵できるので、不足しにくい
特徴➁ 夏の間のみ市場で売られる限定品
馬乳酒「クムス」は、早春に出産をした雌の馬からのみとることができる乳なので、夏の時期にしか出回りません。
1回の乳しぼりで1ℓ程度しか絞れないので、かなりの貴重品です。
【真夏の甘酒売り】
江戸時代も明治の時代も、夏の飲み物として甘酒が売られていました。「飲む点滴」とも言われる甘酒は、疲労回復や腸内環境を整えるなど効果抜群のようですよ。皆さん酷暑を乗り切りましょう!https://t.co/oqIdhxpohV pic.twitter.com/sp3ypqKrDS— 東京都公文書館 (@tokyo_archives) July 14, 2022
特徴➂ 日本のカルピスの起源
馬乳酒「クムス」は、実は日本の発酵文化とも深い関わりがあります。
実は馬乳酒「クムス」は、日本で大人気の定番発酵飲料のカルピスの元祖だと言われているのです。
カルピス株式会社の創業者の三島海雲氏は、当時僧侶をしていました。
仕事でモンゴルに渡り、馬乳酒「クムス」に出会い、飲み続けるうちにどんどん顔色が良くなり、疲れがとれ、胃腸の調子が良くなっていくことに気がつきました。
帰国後、馬乳酒「クムス」の存在が忘れられず、同じ乳酸菌飲料のカルピスを作ったのです。
日本酒ではありませんが、#キルギス という国に行った時に見つけた馬乳酒クムスです。
カルピスの期限になったお酒だとか。。お味はかなり人を選ぶ味でした_(:q」∠)_ pic.twitter.com/2Sl52KnOQc
— 長野県酒造組合 official /祝【GI長野】指定 (@NaganoSake369) April 17, 2020
カルピスってモンゴルの馬乳酒をヒントに作ったものですね
— クエーサー (@M27KKZ) July 8, 2022
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馬乳酒(クムス)の作り方
馬乳酒(クムス)が完成するまでには、大きくわけて2つのステップを踏みます。
作り方➁ 発酵
一つずつ見ていきましょう。
作り方➀ 搾乳
馬乳酒(クムス)はまず、早春に出産をした若い雌の馬の乳を搾ることからはじまります。
1回の乳しぼりで1リットル程度しかしぼることができないので、馬乳は貴重品です。
実際にカザフスタン共和国の馬乳酒(クムス)に関連するフィールドワークを行った早稲田大学の岩垣氏の資料(※3)によると、搾乳は1日平均5~6回も行われるとのこと。
➁2時間ごとに搾乳する(8時/10時/12時/14時/16時)
作り方➁ 発酵
貴重なしぼりたての馬乳に、以前発酵させた古い馬乳酒(クムス)を混ぜて、スターターにします。
以前発酵させた古い馬乳酒(クムス)には、すでにたくさんの菌が住み着いているので、酸味が強いのだとか。
➁2~3時間、かき混ぜ続ける
➂一晩寝かせたら完成
1晩で飲むことができるようになるのは、やはり甘酒に似ています。
馬乳酒(クムス)は完成後もどんどん発酵が進み、発酵が進めば進むほど、酸味が強くなります。
フフルと呼ばれる馬乳酒を醸す皮袋。
遊牧民は馬乳酒からビタミンを摂ります。野菜入らず。草原の草を馬が食べ、その乳を人が加工して飲む。草原の栄養を馬を介在して摂るんですね😌#ブログ
№53 継承・伝え遺す力。 https://t.co/AKtAwTplXq pic.twitter.com/xDlmfhFAAo— 亞藍 arran design room. (@arran_design) July 17, 2022
カザフスタン共和国のフィールドワーク研究資料(※3)によると、7~8月の馬乳酒(クムス)を飲み続けるのが困難な理由が書かれていました。
引用:中央アジアの馬乳酒クムスが作り出す文化 ~カザフスタン共和国を事例として~
http://www.cdij.org/shikohin/forum/data_12/resume_iwagaki.pdf
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馬乳酒(クムス)の味
モンゴルの遊牧民の中には、夏の間は食事を摂らず、馬乳酒(クムス)を食事の代わりにすることがあることも報告されるほど、生活に密着している馬乳酒(クムス)。
子どもから大人まで、誰もが必ず飲む文化がある地域もあるようですが、一体どんな味なのでしょうか?
特徴➁ 酸味が強烈:PH3.5
一つずつ見ていきましょう。
特徴➀ アルコール度数:1~3%(微炭酸)
馬乳酒(クムス)には、微量ですがアルコールが含まれています。そのアルコール度数は、約1~3%です。
これは発酵の過程で酵母菌を使っているから。
酵母菌は、ビールや日本酒を作るときに大活躍する菌のひとつです。
アルコール度数は、馬乳酒(クムス)を発酵する過程によるので、作る地域や方法によって異なりますが、大体1~3%で、軽い発泡性を感じられるのが一般的なようです。
サントリーチューハイ「ほろよい」のアルコール度数は3%!馬乳酒(クムス)は、「ほろよい」ぐらいのアルコール度数だと思っておくといいかも…。でもキルギスでは子どもも馬乳酒(クムス)を飲みます。笑
馬乳酒"Кымыз"(クムス)は草原の馬を連想させる独特の香りがする。微発砲で酸味が強い。
— 郷土菓子研究社のハヤシ( 📸 ) (@kyodogashi) July 5, 2013
馬乳酒はフェタチーズの周りの水分にアルコール足したみたいな味すると思うんだけど、そもそもフェタチーズの水分が理解されなくて一度も賛同を得たことがない。
おじちゃん馬乳酒ガブガブ飲んでた。Nalaikh, Mongolia / 2018 pic.twitter.com/coOBbfBSTV
— Nanako Koyama (@koyamananako) July 12, 2022
カザフスタンと言えば馬乳酒(クムス)
日本人には苦手と言う方が多いですが、知り合いの子供はアルマティの中央バザールで馬乳酒をグビグビ飲んでいた「あっぱれ」!
🇰🇿🇰🇿🇰🇿#カザフスタン #中央アジア #シルクロード #一人旅#バザール #アルマティ pic.twitter.com/0OaWqLia8I— ディスカバリーセントラルアジア (@Dkazakhstan) September 23, 2020
キルギス17日目(8/28)輪行日
サリタシュ→オシ→ビシュケク
オシからビシュケクは夜行マルシュで移動。晩飯食ってから集合と言われたのに、発車してから晩飯2と晩飯3があってめっちゃ食べるはめになった。美味しいコンポートを飲んで少しサハ共和国を思い出した。
馬乳酒クムスは何度飲んでも慣れない pic.twitter.com/wZBoRzeAoV— きぬがわ (@kinugawayoshiki) August 30, 2021
特徴➁ 酸味が強烈:PH3.5
馬乳酒(クムス)は、酸味が強く、PH3.5であると言われています。
ヒトの口の中は大体PH7程度だと言われているので、PH3.5ははっきり酸味を感じるレベルです。
愛知三の丸クリニックが発表している酸性度に関する資料(※4)によると、市販の清涼飲料水やアルコールの酸性度は以下のとおりです。
午後の紅茶(ミルクティ):PH6.8
午後の紅茶(ダージリン):PH5.5
ウィルキンソン炭酸水:PH4.1
トロピカーナ(オレンジ):PH3.7
馬乳酒(クムス):PH3.5
カルピスウォーター:PH3.4
トロピカーナ(グレープフルーツ):PH3.2
コカ・コーラ:PH2.2
飲んだことのある人には分かると思うが、クムス(馬乳酒)は新鮮なものでも酸味が強烈なので喉が乾いたからといってガブガブ飲めるものではない。 https://t.co/jPLAZ9NukM
— 露探【円谷猪四郎】 (@karategin) July 28, 2021
久しぶりにクムス飲んでそのあまりの酸っぱさに顔をしかめたい。
— 三矢英人卿 (@hideto328) July 29, 2021
キルギスにもクムスという馬乳酒があって、市場に街角に観光地、そこらじゅうにスタンドがあってみんなゴクゴク飲んでました 栄養価が高くて胃腸にもよく、夏場の麦茶的なものらしい そんな現地の人がみんな大好きなクムス、味は正直に言って胃の中のものを散々吐いた後に残った後味 そして微炭酸
— 鷹行静 (@tsiz1223) May 20, 2018
馬乳酒(クムス)はどこで買える?
馬乳酒(クムス)は、夏の間であれば、町のいろんな場所でかんたんに買うことが可能です。
羊の乳を発酵させて作るキルギスのお酒クムス。バザールとかでペットボトルに詰めて売られてる(右上 pic.twitter.com/9QawymcmZ0
— uzw (@uzawa_izu) February 22, 2020
ガザルケントで買ったクムス。
ファンタじゃないよwクムスですw pic.twitter.com/SXppgu4QOH
— Limon🇺🇿 (@Limon83947999) August 8, 2021
まとめ:馬乳酒はどんな味?日本のカルピスの起源
馬乳酒(クムス)は、その名のとおり馬の生乳を乳酸菌と酵母で発酵させた乳酸菌飲料のことを言います。
=馬の生乳を乳酸菌と酵母で発酵させた乳酸菌飲料(アルコール含)
その味の特徴は以下のとおり。
特徴➁ 酸味が強烈:PH3.5
アルコール度数は日本のお酒でいうと「ほろよい」程度、酸味は「オレンジジュース」程度ですが、お砂糖を入れていない分、かなり強い酸味を感じるようです。
実際に飲んだことがある日本人は、「馬乳酒(クムス)はまずい」「馬乳酒(クムス)は苦手」という方も多いことがわかりました。
もしモンゴル・キルギスに行く機会があったら、絶対に飲んでみたい!
しかし、やっぱりわたしたちは日本人。
毎日習慣的に飲んで、美容や健康のサポートに使いたいなら甘酒のほうが口に合い、毎日飲んでもストレスにならなそうです。
参考にしてみてくださいね。
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参考文献
http://kyrgyzstan.co.jp/food/
https://core.ac.uk/download/pdf/144452522.pdf
http://www.cdij.org/shikohin/forum/data_12/resume_iwagaki.pdf
http://www.sannomaru-hp.jp/news/wp-content/uploads/2017/01/%E6%84%9B%E7%9F%A5%E4%B8%89%E3%81%AE%E4%B8%B8%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%A0%E3%82%88%E3%82%8A_%E7%AC%AC%EF%BC%95%E5%8F%B7_%E8%B3%87%E6%96%99_%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%83%BB%E9%A3%B2%E6%96%99%E3%81%AE%E9%85%B8%E6%80%A7%E5%BA%A6%E8%A1%A8.pdf