今回は、こんな疑問にお答えします。
・ダイエットの定説「寝る前に食べると太る」という結果のエビデンスはない
・それどころか「夜たくさん食べると痩せた」というイスラム教のラマダン中(断食)のデータも!
・しかし、自律神経や食事誘発性熱産生、BMAL1だけを考えると、夜太りやすいというのは一理ある
「朝食はしっかり食べて、夕食は軽くしよう」
「夜食べると太るから、21時以降は食べない」
などとよく言われます。
「夜より朝のほうが太らない」という考え方は、よくあるダイエットの定説ですよね。
この根拠として、よく上げられるのが「ビーマルワン(BMAL1)」と呼ばれる、脂肪を貯めやすくする体内のタンパク質です。
しかし、一方で「寝る前に食べると太る」は嘘だとも言われています。さて、一体どちらが本当なのでしょうか?
今回は「寝る前に食べると太る」説の根拠となるビーマルワン(BMAL1)やその他の原因を大調査!「寝る前に食べると太る」説が、嘘かホントか整理してみました。
結論:ダイエットの定説「寝る前に食べると太る」は嘘
ダイエットの定説「寝る前に食べると太る」説を支持したくなる、信頼性が高いエビデンスはあるのでしょうか?
「寝る前に食べると太る」に関するエビデンスはない
ダイエットの定説「寝る前に食べると太る」説について調査したところ、実際に朝多めに食べる人と夜多めに食べる人を同じ条件で並べて、どちらが太るか、どちらがヤセるかきちんと正確に調査したエビデンスはありませんでした。
しかし、逆にイスラム教の若者を対象に調べた研究で、夜だけたくさん食べても意外と太らないというおもしろいエビデンスがあります。
嘘の根拠➀ 夜にたくさん食べても意外と太らないエビデンス
2007年にヨルダンで行われた研究(※1)です。
舞台は、イスラム教の国。
イスラム教には「ラマダン」と呼ばれる断食月があります。
彼らは日が出ている昼間の時間は食事をしません。そして、日が沈んでから食事をすることが許されます。日が昇る前に大量の食事をするのです。
物理的に夜食べる生活を1か月続けることになるので「ラマダン中に太るのでは?」という仮説を立てました。
結果は、痩せました。
体重とBMIは減少しましたが、食事のバランスや摂取量、身体活動のレベル、筋肉量はほぼかわらなかったことも言及されています。
予想とは違い、夜たくさん食べる生活(ラマダン)のほうが痩せるという結果がでました。
嘘の根拠➁ 夜たくさん食べると体脂肪が減りやすいエビデンス
もうひとつおもしろいのは、1997年にアメリカでの農務省や農業研究サービスが提示した論文(※2)です。
このエビデンスの内容によると…
・夜にたくさん食べた被験者は体脂肪が減り、その維持ができた
ということがわかりました。
他にも食べる時間とダイエットに関する論文は多いのですが、あまりはっきりとした結果が出ていない印象です。
ダイエットの定説「寝る前に食べると太る」と言われる理由
なぜ、ダイエットの定説「寝る前に食べると太る」というウワサが出回り、またそれが嘘だというウワサまで出回っているのでしょうか?
いくつか注目されている理由をピックアップしてみましょう。
理由➁ 食事誘発性熱産生(DIT)が低下するから
理由➂ BMAL1が増えるから
ひとつずつ説明します。
理由➀ 副交感神経が優位になり代謝が減るから
「寝る前に食べると太る」と言われる理由の1つ目は「副交感神経が優位になり代謝が減るから」です。
一般的に夜寝る前に優位になるのは副交感神経、昼間の活動的な時間に優位になるのは交感神経です。
副交感神経=ブレーキ=代謝ダウン
夜寝る前は副交感神経が優位になるので、血管は拡張し、筋肉もゆるんで、代謝がダウンします。この時にたくさん食べたとしても、エネルギーとして使いにくく、体脂肪としてエネルギーをため込みやすくなります。
理由➁ 食事誘発性熱産生(DIT)が低下するから
「寝る前に食べると太る」と言われる理由の2つ目は「食事誘発性熱産生(DIT)が低下するから」です。
=食事をするときに使われるエネルギー
2010年に日本栄養・食糧学会誌に掲載されたエビデンスによると、食事をするときに使われるエネルギーは、食事をする時間によってかなり異なることがわかっています。
朝食を食べることが多い朝の7時と真夜中の1時では、発生するエネルギーがなんと4倍も違うとか!
この結果、同じ量を食べたとしても夜食べるほうが代謝されにくくなることがわかりました。
理由➂ ビーマルワン(BMAL1)が増えるから
「寝る前に食べると太る」と言われる理由の3つ目は「ビーマルワン(BMAL1)が増えるから」です。
=脂肪を貯めるように体に命令するタンパク質
ビーマルワン(BMAL1)は、脂肪を貯めるように体に命令するタンパク質のことです。
ビーマルワン(BMAL1)がピークになると言われる夜中に血糖値が上がる糖質が多い食事をして、消化や吸収のピークがビーマルワン(BMAL1)のピークと重なると脂肪は増えやすくなります。
また、ビーマルワン(BMAL1)は運動する時間にも関係があり、ビーマルワン(BMAL1)が多い夜に運動するほうが痩せやすいという研究結果(※4)もあります。
ビーマルワン(BMAL1)とは?
「寝る前に食べると太る」問題でよく注目されるビーマルワン(BMAL1)。
どんな特徴があるたんぱく質なのか、整理してみましょう。
ビーマルワン(BMAL1)の意味
ビーマルワン(BMAL1)は、埼玉医科大学医学部生理学の池田正明教授が発見し、命名したタンパク質です。
以下の2つの特徴から、その頭文字をとって、ビーマルワン(BMAL1=Brain and Muscle Arnt-like 1)と名付けました。
➁時計遺伝子(Arnt)のような(like)働きをする
特徴➀ ビーマルワン(BMAL1)は脂肪をため込む働きをする
ビーマルワン(BMAL1)の特徴の1つ目は、「ビーマルワン(BMAL1)は脂肪をため込む働きをする」です。
そのため、「肥満遺伝子」と呼ばれることもあります。
特徴➁ ビーマルワン(BMAL1)が最大量になるのは夜中の2時
ビーマルワン(BMAL1)の特徴の2つ目は、「ビーマルワン(BMAL1)が最大量になるのは夜中の2時」であることです。
時計遺伝子と言われるだけあって、1日24時間でリズミカルに量が変わっていきます。
特徴➂ ビーマルワン(BMAL1)は肥満体質の人のほうが増える
ビーマルワン(BMAL1)の特徴の3つ目は「ビーマルワン(BMAL1)は肥満体質の人のほうが増える」ことです。
マウス実験ではありますが、肥満の場合のほうがヤセ体質の場合よりもビーマルワン(BMAL1)の発言量が増えることがわかっています。(※5)
特徴④ ビーマルワン(BMAL1)が多い夜に運動するほうが痩せやすい
ビーマルワン(BMAL1)の特徴の4つ目は「ビーマルワン(BMAL1)が多い夜に運動するほうが痩せやすい」ことです。
同志社大学で行われた研究(※4)によると、ビーマルワン(BMAL1)が多く発現している夜の時間のほうが、少ない時間の運動よりも効果的であることがわかっています。
ビーマルワン(BMAL1)に関するQ&A
ここからはビーマルワン(BMAL1)に関するウワサを集めてみました。
嘘かホントか、科学的な根拠をまとめてみましょう。
質問➀ ビーマルワン(BMAL1)が欠損すると糖尿病になる!嘘ORホント?
ビーマルワン(BMAL1)が欠損すると、糖尿病になりやすいのは本当です。
旭川大などの調査(※6)によると、1日の睡眠時間が5時間以下の人は、1日の睡眠時間が7時間超の人より、5倍も糖尿病を発症する率が高いということがわかりました。
時計遺伝子「BMAL1」が欠損すると、なぜ肥満や糖尿病が増えるのかは、実は腸、そして腸内細菌にも関係があるのではと言われています。
まとめ ~ビーマルワン(BMAL1)とは?「寝る前に食べると太る」は嘘~
ダイエットの定説「寝る前に食べると太る」は嘘かどうかは、きちんとしたエビデンスは出ていません。
2007年にヨルダンで行われた研究などでは、逆に夜食事をする生活のほうが痩せたという研究も多いのがほんとのところ。
しかし、それでもダイエットの定説「寝る前に食べると太る」が一般的に広まるのは、それなりの理由があります。
理由➁ 食事誘発性熱産生(DIT)が低下するから
理由➂ ビーマルワン(BMAL1)が増えるから
特にビーマルワン(BMAL1)は注目されるたんぱく質で、以下のような特徴があります。
特徴➁ ビーマルワン(BMAL1)が最大量になるのは夜中の2時
特徴➂ ビーマルワン(BMAL1)は肥満体質の人のほうが増える
特徴④ ビーマルワン(BMAL1)が多い夜に運動するほうが痩せやすい
参考にしてみてね。
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17909674/
(※2) Weight loss is greater with consumption of large morning meals and fat-free mass is preserved with large evening meals in women on a controlled weight reduction regimen
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9040548/
(※3) 食事時刻の変化が若年女子の食事誘発性熱産生に及ぼす影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/63/3/63_3_101/_pdf/-char/ja
(※4) 脂肪細胞の時計遺伝子リズムにもとづく運動処方の最適タイミング:時間運動療法の意義
https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-23300242/233002422013jisseki/
(※5) 時計遺伝子BMAL1の脂肪細胞特異的な機能ならびに発現制御機構の解析
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590077/
(※6) Short Sleep Duration and Poor Sleep Quality Increase the Risk of Diabetes in Japanese Workers With No Family History of Diabetes
https://diabetesjournals.org/care/article/35/2/313/38468/Short-Sleep-Duration-and-Poor-Sleep-Quality
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