腸に関する調べものをしていると、国立がん研究センターのホームページにたどり着くことがあります。
無知なわたしは、
がん研究をされている国立がん研究センターなのに、すごいなぁ、腸内細菌についても研究してるんだなぁ
と、しばらくのんびり思っていました。でも、よくよく考えたら、がん(腫瘍)の分子情報を研究しているわけだから、その原因と関連するかもしれない腸内細菌もどんぴしゃで研究対象でもおかしくないんですよね。
国立がん研究センターのホームページに掲載されている「令和3年度計画」(※1)によると、国立がん研究センターが腸に注目していることがわかる文言を見つけました。
国立がん研究センターは、がんの研究だけでなく、がんの原因に関連するであろうこと全体を研究されていて、その中に腸内細菌叢についての研究もちゃんと入っているんです。
この事実だけみても、腸内細菌叢は健康のためにとても大事なことがわかります。
当たり前だけど、体はつながっているんだなぁ。
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胃の切除と腸内細菌
体がつながっているならば、体の中の機能をひとつ大きく変えたら、腸はどうなるのでしょう。
例えば、手術。
国立がんセンターでは、胃がんの治療として胃切除の手術を受けた患者さん50人とそれ以外の人56人の便を集めて、その中に確認できた腸内細菌群のDNAを検査する「メタゲノム解析」(※2)を行っています。
なぜ、腸内細菌叢に注目したのか?
実は、アメリカではがん治療のためではなく、肥満の治療のために、胃切除手術をすることがあります。手術後は体重が減少しますが、それだけではなく腸内細菌叢も変化することがわかっていました。
だったら、肥満の治療以外でもがん治療でも同じように腸内細菌叢に変化があるのでは?と考えたわけです。
もともと胃がんの患者さんは、手術をした後に、腸内細菌との関連が指摘されている「異時性大腸がん」を発症するリスクが高くなることが知られていました。ということは、やっぱり腸内細菌叢が変化しているのではないかという仮説が立てられたのです。
あるがんが発生してから1年以上経って発生するがん
胃の切除が腸内環境に与える影響
国立がん研究センターの「メタゲノム解析」でわかったことを要約したものがこちらです。
・手術後はビタミンB12が小腸で吸収されずに大腸まで残るので、
ビタミンB12の摂取能力を持つ細菌が増加する
・大腸がんを招くと言われる菌が増加する
(フソバクテリウムヌクレアタムなど)
ちょっと腸活を知っている人なら、一瞬びっくりするかもしれません。そう、胃切除を行うと、腸内細菌の多様性が高まることがわかりました。
通常は、腸内細菌の多様性が高まるのはとてもいいことです。いろんなものをバランスよく食べ、適度な運動機会と睡眠時間をとり、ストレスが減っているのかなと思いきや…。どうやらそんなに単純なことではなさそうです。
研究結果によると、この菌の種類と数が増えた理由は、通常口の中にいるはずの菌が、胃の部分が小さいことによって、直接腸まで届いてしまっているということなんです。
そしてその中には、大腸がんのリスクを高めると言われる、「フソバクテリウムヌクレアタム」が!!歯周病の原因菌でもあり、口内に多くいる菌です。
胃は胃液によって、外から入ってきたウイルスや有害なものの力を弱めてくれる大事な働きをしている臓器。その働きが弱まっているということなのかもしれません。
やっぱり人間の体はすごい。絶妙なバランスでできていて、要らないものなんてないんですよね。参考にしてみてね。
参考:研究結果&論文等
https://www.ncc.go.jp/jp/about/midterm_objective/keikaku.pdf
(※2)胃切除術による腸内環境の変化を解明 胃切除後の合併疾患の克服へ
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0117/index.html
※この内容は、診断・治療または医療アドバイスを提供しているわけではありません。あくまで情報提供のみを目的としています。
※診断や治療に関する医療については、医師または医療専門家に相談してください。この内容は医療専門家からのアドバイスに代わるものでもありません。