便の色は、健康をチェックするためのいちばん身近なバロメーター。毎日便を観察することを「観便」といいます。普段は、茶色やこげ茶、黄土色の便ですが、たまに炭のように真っ黒な便、「タール便」がでることがあります。
「え?もしかして、病気」
…と不安になり、恐怖のためになにも対処できなくなることがあります。大丈夫、まずはいつもと違う便の色に慌てないで。冷静に原因を突き止めて、最適な対処をしましょう。今回は、黒い便(タール便)とはなにか、そしてもし黒い便(タール便)が出たらどうしたらいいのかを整理してみました。
黒い便(タール便)とは?
黒い便は「タール便」と呼ばれます。
=コールタールのような黒い便
コールタールとは、工事現場などでよく使われる石炭を溶かしたドロドロの液体のことです。油っぽく、ドロドロとした形状の便がコールタールに似ていることから、真っ黒な便のことをタール便と呼ぶようになりました。
タール便は、ただの黒っぽい便とは違います。ただの黒っぽい便とタール便には、2つの違いがあります。
タール便の2つの特徴
タール便には、以下の2つの特徴があります。
特徴① 形状はねっとり・ドロドロしている
タール便は、それこそコールタールのように、ねっとり・ドロドロしているという特徴があります。同じ黒い便でも、水分量が少なくコロコロ・カチカチ便の場合がありますが、この場合は、便秘である可能性が高いです。
便秘になると、なぜ便が黒っぽくなるのか。
それは、腸内環境がアルカリ性に傾いていることに原因があります。
腸内に長く留まった便は、腸内にいる悪玉菌の活動によって腐敗します。長く腐敗しつづけると、腸内環境全体が乱れ、善玉菌が減っていきます。善玉菌は、乳酸や酪酸などの酸を作りますが、それらの酸が不足していくことで腸内全体がアルカリ性に傾きます。
このアルカリ性に傾いた状態の腸で作られた便は、色が黒っぽくなります。(逆に、酸性に傾いた状態の腸で作られた便は、黄色っぽくなります)
また、便が長く腸に留まれば留まるほど、水分が腸壁から吸収されます。健康な人の便の水分量は約80%ですが、便秘の場合の水分量は、60%程度!いきまないと出すことができないぐらいの、コロコロ・カチカチ便です。
多少色が黒くても、コロコロ・カチカチ便であれば、便秘の可能性があります。
特徴② イカ墨のように真っ黒である
黒い便は、実はそんなに珍しくありません。海苔などの海藻を多く食べた翌日にも出ますし、鉄欠乏性貧血の方が鉄分のサプリメントや錠剤を飲んだだけでも黒い便はでます。
鉄分のサプリメントや錠剤は、便の色が変わるだけでなく、吐き気や下痢などの体調不良をともなうことがあります。体に合っていないこともあるので、薬局や医師の指示にしたがって服用するようにしてください。
また、黒く見えても、緑色っぽいこともあります。
緑色は野菜に含まれるクロロフィルを多く食べた時に出ることが多い便です。野菜ならわかりやすいのですが、一部の便秘薬にもクロロフィル配合のものがあります。
タール便は、便秘によるこげ茶がもっと黒っぽく変化した便や、鉄分やクロロフィルなどの黒緑っぽい便とは全く異なる原因ででます。
タール便が出る原因
真っ黒でドロドロしたタール便が出るときは、胃や十二指腸など、肛門から離れた場所で出血が起こっている可能性があります。胃や十二指腸は、大腸と比べるとかなり血流が多い臓器です。なにかトラブルが起こると、大量に出血します。
その血液が小腸、大腸に流れていく間に、胃酸の影響で黒く変化していきます。体外に血液が出るまでに時間がかかるので黒いタール便がでるのです。
別のケース① 赤い便が出る場合
便が赤い場合は、肛門から近いところで出血が起きている可能性があります。
赤い便(血便)→大腸でトラブルが起きているサイン
別のケース② 白い便が出る場合
便が白い場合は、肝臓周りでトラブルを抱えている可能性があります。
もともとヒトの便は茶色ではありません。白色をしています。そこに肝臓で作られる胆汁が混ざり、茶色くなります。行ってしまえば、便の色は胆汁の色です。
しかし、なんらかの病気によって胆汁が正常に出なくなると、真っ白い便がでます。
白い便(胆汁なし便)→大腸でトラブルが起きているサイン
胆汁は脂肪を消化するために必要な液体ですが、胆管がん、膵頭部がんなどの病気になると、正常に作られなくなります。
タール便はもちろん、赤い便や白い便など、いつもと便の色が違う場合は、早急に病院で検査を受けることが必要です。消化器内科や内科がある病院に行き、専門的な治療ができる医師に相談しましょう。
タール便が出た時の観便チェックポイント
「タール便がでた!」と思ったら、不安に思いながらも、コワさで放置してしまう方がいます。この場合、放置がいちばん危険です。まずは、状況を確認し、タール便の疑いが少しでもあるようであれば、専門の医師に相談してください。
そのためにも、毎日きちんと便を観察しましょう。「観便」は、健康的な生活を送るためにとても大切です。
タール便が出たら、まず以下の3つのチェックポイントを確認しましょう。
ポイント① 前日の食事や薬の影響をチェック
以下の食べものを食べた翌日は便が黒くなります。便を確認しながら、前日、前々日に食べたものを見直してみましょう。
・イカ墨を使った料理
・食用炭を使った料理
・チョコレートやココアを使った料理
・大量のひじきや海苔などの海藻類
・大量の肉類(タンパク質類)
・便秘薬/下剤 (ビスマス塩製剤)
・鉄関連の薬やサプリメント (硫酸鉄)
ポイント② 他の病気の影響をチェック
黒い便は、他の病気の治療中に飲んでいる薬の影響である可能性もあります。
例えば、貧血の場合です。貧血と診断された場合に処方される鉄関連の薬(フェロミアR・フェロ・グラデュメットR・インクレミンRなど)を飲むと、タール便に似た黒い便がでることがあります。
また、慢性肝疾患の治療薬であるプロトポルフィリンナトリウムを飲んでいる場合もタール便に似た黒い便がでます。
なんらかの他の病気によって、薬を処方されている場合は、主治医の診断に従いましょう。
ポイント③ タール便の形状をチェック
黒い便が出たけど、食事やサプリメント、他の病気の処方薬などに心当たりがない場合は、ここ数日ちゃんと便が出ているかどうか確認してください。
便秘の場合は、便が黒っぽくなります。そして、タール便のようなドロドロの便ではなく、腸に水分をとられてカチコチの便になります。
この3つのチェックポイントをおさえた上で、心配な点がある場合はすぐに医師などの専門家に相談しましょう。
タール便が出た時に考えられる病気と見分け方
ただの黒っぽい便ではなく、タール便が出た時に考えられる病気は以下の通りです。
病気① 胃潰瘍
胃の粘膜に潰瘍ができる病気です。
原因は、ピロリ菌などのウイルス感染のほか、ストレスや暴飲暴食なども影響します。胃酸の消化作用が強すぎて、胃の内壁が荒れたり、損傷します。
タール便が出る以外にも、以下のような症状がでることが多いといわれています。
2:げっぷが多くなる
3:吐き気や胃もたれがする
4:食欲が減る
5:吐血する
病気② 十二指腸潰瘍
十二指腸に潰瘍ができる病気です。
原因は、胃潰瘍と同様にピロリ菌などのウイルス感染のほか、ストレスや暴飲暴食なども影響します。胃酸の分泌が過剰になって十二指腸に胃液が流れ込むことで、十二指腸の粘膜が傷つき、潰瘍になることも多いようです。
病気③ 胃がん・食道がん・十二指腸がん
食道や胃壁・十二指腸の内側の粘膜に発生するがんです。
原因はピロリ菌感染や食生活の乱れ、過度な飲酒習慣、過労やストレスが挙げられます。特に近年注目されているのがピロリ菌の存在です。専門家によっては、ピロリ菌が胃がんの原因の99%だとおっしゃる場合もあります。
まとめ
黒い便が出たらいつもと違う便の色に慌てないで、冷静に原因を突き止めて、最適な対処をしましょう。
まずは、本当にそれがタール便なのか、ただの黒っぽい便なのか確認することが重要です。
昨日食べたものの中に便を黒くするもの(イカ墨を使った料理、食用炭を使った料理、大量のひじきや海苔などの海藻類、大量の肉類など)が含まれていないか確認しましょう。
また、他の病気の影響がないかどうか、健康のために飲んでいるサプリメントを含め、処方された薬に便を黒くするものが含まれていないか確認してください。
貧血の方や慢性肝疾患は便が黒くなる可能性が高いといわれています。
そして、最後に黒い便の形状を確認しましょう。ドロドロならタール便の可能性が高いですが、カチコチなら便秘が原因で便の色が黒っぽくなっているだけの可能性もあります。
どんなに忙しくても、少しでも不安を感じるなら、今すぐ専門の病院の医師に相談してください。健康より大事なものはありません。
参考にしてみてね。