【この記事で解決できるお悩み】
・麦味噌はまずい・体に悪いってホント?
・米味噌と栄養価はどう違うの?
・普段なじみのない麦味噌について知りたい!
この記事では、こんなお悩みを解決します!
日本の発酵調味料の定番でありながら、地域によって食べ方や味が全く違うといわれる、味噌。
2021年の全味工連集計「みその種類別出荷数量」(※1)によると、米味噌の出荷量が83.4%を占める中、麦味噌の出荷量はたった3.8%で、全国でも珍しい変わり種味噌であることがわかります。
そこで今回は、麦味噌とはいったいどんな味噌なのかを徹底解説!
ネット上で「まずい」「体に悪い」と噂される理由はもちろん、その特徴や栄養価、保存方法までをまるっとまとめてみました。
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この記事を書いた人:
腸活研究家 長谷川ろみ
発酵食品にハマり、ダイエットなしで12㎏減。痩せたことをきっかけに腸を愛でる生活に目覚める。重度の便秘から解放され、腸活研究家として活動開始。今では発酵ライフ推進協会通信校校長を務め、昔の自分と同じ悩みを持つ方に向けて腸や菌のおもしろさを発信中。詳しくはこちら
麦味噌がまずいと言われる理由
結論から言うと、麦味噌は決して「まずい」わけではなさそうです。
しかし、まずいとウワサされるのには理由がありました。
一つずつ見ていきましょう。
故郷の味噌と違うから
麦味噌の出荷量比率は、たった3.8%と冒頭でお話しました。
実はこの出荷量の低さが、「まずい」と言われやすい原因のひとつ。
麦味噌になじみがない方は全国に多く、そもそも麦味噌の存在を知りません。
人は自分が幼いころから食べてきた故郷の味を「おいしい」と思うものですから、瞬間的にいつも食べている米味噌と比べてしまって、「いつもと違う=まずい」と判断しがちです。
逆に言えば、最初は米味噌と違う麦味噌の味にびっくりしているだけで、慣れてきたらおいしいと思う可能性があります。
食べるとみんな、いろんな意味でびっくりしてます。笑「まずい」「おいしい」と賛否両論!
実はわたしも、発酵食品に興味を持つ前は麦味噌って食べたことなかったの!そういう関東勢はとても多い気がします。
黒く変色しやすいから?
麦味噌は米味噌と比較すると、塩分が少なく甘みが強い味噌です。
これは、麦味噌に多くの麦麹が使用されているため。
糖質が多い分、麹菌のエサが多く、発酵が進みやすいという特徴があります。
発酵が進みやすいということは、メイラード反応も起こりやすく、味噌の色が黒く変色しやすいという特徴も。
品質には問題ありませんが、この黒く変色するスピードの速さに驚き、「黒い=まずい」と考える人もいるようです。
色が変わっても味が変わるわけではないので、ほんとのことをいうと黒くなってもまずくはなりません。でも、心配になる気持ちも…わからなくはないですよね。
臭いがキツいから?
慣れていない臭いはなんとなく不安になるもの。
米味噌をずっと食べてきた人にとって、慣れない麦味噌の発酵臭は、腐敗臭なのかどうか判断がつかず心配になるようです。
その心配が継続すると…「まずい」になっちゃうのかも?
逆に麦味噌のにおいが好きな方もたくさんいますが、それこそ慣れていないとニガテになりがちなのがにおい。
麦味噌の匂いが特に強いのは、発酵したての時期だと言われていますので、どうしても苦手な方は、少し寝かせてから食べるのもひとつの手です。
麦味噌が体に悪いと言われる理由
結論から言うと、麦味噌は決して「体に悪い」わけではありません。
しかし、まずいと言われるのと同様、体に悪いとウワサされるのにも理由がありました。
一つずつ見ていきましょう。
黒条線(こくじょうせん)が誤解されるから
体に悪いと言われやすい理由は、麦味噌特有の「黒条線(こくじょうせん)」の存在が関連しています。
黒条線
=大麦の種子を形成する時に栄養分の通り道となる部分
初めて見る方は、ナニコレ??ってびっくりするようです。確かに私も、最初はゴミだとかんちがいしちゃいました。笑
麦味噌は、大豆と麦と塩で作る味噌で、米味噌には含まれない「麦」が入っています。
麦には必ず、「黒条線(こくじょうせん)」と呼ばれる黒い縦線があり、味噌が完成してもこの線は残ります。
普段麦味噌を食べない人は、この黒条線のことを知りません。
そのため「異物が混じっている!」「木片が入っている!」と勘違いして、味噌蔵さんに問い合わせるケースもあるようです。
麦味噌が主流の九州地方では、味噌汁を作る時にこの黒条線を取り除くために、濾す工程を設けるようです。
私は関東生まれですが、味噌汁を作るときにあまり濾すことがなかったので、最初に知った時はびっくりしました。たしかにおばあちゃんは濾してたような気もするんだけど…昔は米味噌でも濾していたのかなぁ…。
炭水化物(糖質)が多いから
最近はゆるい糖質制限ダイエットをされている方も多く、糖質の摂り過ぎが心配されがちです。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)(※2)によると、麦味噌と米味噌の炭水化物量と食塩相当量は以下のとおり。
麦味噌 | 米味噌(淡色辛みそ) | 米味噌(赤色辛みそ) | |
---|---|---|---|
カロリー | 184kcal | 182kcal | 178kcal |
タンパク質 | 9.7g | 12.5g | 13.1g |
脂質 | 4.3g | 6.0g | 5.5g |
炭水化物 | 30.0g | 21.9g | 21.1g |
食塩相当量 | 10.7g | 12.4g | 13.0g |
米味噌と比べると麦味噌は炭水化物が多く、全体的に糖質は多め。
これが体に悪いと勘違いされやすい理由の一つになっているようです。
しかし、一方で米味噌よりも塩分量が少ないという特徴もあります。
塩分ひかえめの味噌を探している人にとっては、むしろ健康的な味噌に感じるかもしれません。
糖質が多いから健康に悪いとかではないんだけど…誤解されがちなようです。
麦味噌の特徴
麦味噌は、一部の方を除いては、おいしいと評判の人気の味噌です。
その特徴をあげてみると、以下の4つ。
一つずつ見ていきましょう。
原料に「麦麹」を使って発酵させる
麦味噌の特徴の1つ目は、原料に「麦麹」を使って発酵させることです。
一般的な米味噌は、米麹と大豆、塩で作るところ、麦味噌は麦麹と大豆、塩で作ります。
米味噌=米麹+大豆+塩
麦味噌=麦麹+大豆+塩
米麹より麦麹のほうが甘い味噌になりやすく、麦の風味を感じます。
慣れていない人は匂いが気になるみたいだけど、わたしは好き~。気になる人は寝かせば寝かせるほど匂いは和らぎます。匂いが苦手な人は少しそのままにしておくのもよいかも!
九州全域と山口県でよく食べられる
麦味噌の特徴の2つ目は、九州全域と山口県、そして愛媛県でよく食べられることです。
主に南の地域がメインなんですよね。
九州の暖かい地域で麦味噌が広まったのには、理由があります。
麦味噌が生まれた平安時代。日本では全国各地で稲作を行っていました。
しかし、九州は米の収穫があまりうまくいかず、麦を育てることが多かったのだとか。
そこで米を使った米麹の代わりに、麦を使った麦麹が作られるようになったそうです。
引用:(※1)味噌の歴史と機能成分(株式会社ますや食品研究所)
こう見ると、本当に南のほうだけなんだなぁ…
塩分が少なくて、甘い
麦味噌は米味噌に比べると、塩分が少なく、とても甘いという特徴があります。
麦麹は米麹に比べて、麹が多く含まれます。麹は麦に含まれるでんぷんを分解し、たくさんの糖(オリゴ糖やブドウ糖など)をつくるので、麦味噌は甘くなります。
糖は乳酸菌や酵母などのエサになるので、さらに発酵が進みやすくなり、多くの臭気成分も生まれることとなります。
麦味噌の香りが独特なのは、酵母のエサが多いこととも関係しているんですね。
また、塩分量も米味噌より麦味噌のほうが少なくなります。
塩分を控えたい人は、米味噌から麦味噌に変更するのもよいかもしれません。
変色しやすい(メイラード反応が起こりやすい)
麦味噌の特徴の4つ目は、変色しやすいことです。
常温はもちろんですが、冷蔵庫にいれていても麦味噌は比較的早く、茶色っぽく変色してしまいます。
これは、メイラード反応という化学反応が関係しています。
メイラード反応
=タンパク質と糖が反応して、褐色物質(メラノイジン)が増える反応のこと
=褐変反応、マイヤール反応ともいう
麦味噌は、麹の量が多く、糖が多い味噌です。味噌の原料にはタンパク質が多い大豆も含まれているので、タンパク質と糖が化学反応を起こしやすくなります。
色が変わっても品質には問題ないので、色の変化を楽しんじゃいましょう。
麦味噌の栄養価
麦味噌と米味噌の栄養価は似ているようで違います。
ここからは栄養価や期待できる効果効能の違いについて、整理してみましょう。
麦味噌と米味噌との違いを比較!
日本食品標準成分表2020年版(八訂)(※2)によると、栄養価の違いは以下のとおり。
米味噌(淡色) | 麦味噌 | |
---|---|---|
エネルギー | 182 | 184 |
たんぱく質(g) | 12.5 | 9.7 |
脂質(g) | 6 | 4.3 |
食物繊維総量(g) | 4.9 | 6.3 |
炭水化物(g) | 21.9 | 30 |
ナトリウム(mg) | 4900 | 4200 |
カリウム(mg) | 380 | 340 |
カルシウム(mg) | 100 | 80 |
マグネシウム(mg) | 75 | 55 |
リン(mg) | 170 | 120 |
鉄(mg) | 4 | 3 |
亜鉛(mg) | 1.1 | 0.9 |
銅(mg) | 0.39 | 0.31 |
ヨウ素(μg) | 1 | 16 |
セレン(μg) | 9 | 2 |
クロム(μg) | 2 | 2 |
モリブデン(μg) | 57 | 15 |
ビタミンK(μg) | 11 | 9 |
ビタミンB1(mg) | 0.03 | 0.04 |
ビタミンB2(mg) | 0.1 | 0.1 |
ナイアシン(mg) | 1.5 | 1.5 |
ビタミンB6(mg) | 0.11 | 0.1 |
葉酸(μg) | 68 | 35 |
ビオチン(μg) | 12 | 8.4 |
食塩相当量(g) | 12.4 | 10.7 |
気になるのは食物繊維の多さ、そして塩分量の少なさです。
全く味が違うのにカロリーなどはあまり変わらないのがおもしろいですね。
水溶性食物繊維が多い
麦味噌は米味噌に比べて、食物繊維が多いという特徴があります。
米味噌 | 麦味噌 | |
---|---|---|
水溶性 | 0.6 | 0.7 |
不溶性 | 4.3 | 5.6 |
総量 | 4.9 | 6.3 |
食物繊維の全体量の違いはもちろんですが、米味噌にはあまり含まれていない大麦由来の水溶性食物繊維「大麦β-グルカン」が豊富に含まれています。
大麦β-グルカン
=大麦に含まれる水溶性食物繊維の一種
=発酵の過程で分解されても同じ機能性を持つ(※3、※4)
日本食生活学会誌に掲載された大妻女子大学の報告(※5)によると、大麦β-グルカンには、血中コレステロール濃度の正常化や血糖値の上昇抑制、内臓脂肪の蓄積抑制などの効果あるとのこと。
【大麦β-グルカンに期待される効果】
血中のコレステロール値を下げる効果
食後の血糖値の急上昇を抑える効果
内臓脂肪の蓄積を抑える効果
腸内の善玉菌を増やすことによる腸内環境改善
麦味噌は体に悪いというウワサは、やっぱりあくまでウワサ!むしろ大麦β-グルカンの効果に期待したくなる報告ですね!
塩分相当量が少ない
麦味噌は米味噌に比べて、塩分相当量が少ないという特徴があります。
麦味噌 | 米味噌(淡色辛みそ) | 米味噌(赤色辛みそ) | |
---|---|---|---|
食塩相当量 | 10.7g | 12.4g | 13.0g |
飽食の時代は、どうしても塩分の摂り過ぎにならないように気を付ける必要があります。
世界保健機関(WHO)が設定した塩分の摂取基準(※6)は、1日5g。
これは、塩を使って発酵させる発酵食品や発酵調味料を使うことが多い日本人にとって、簡単にクリアできる数字ではありません。
食事の塩分を減らしたい時、通常の米味噌と塩分が少なめの麦味噌に置き換えるというのもひとつの手です。
一部の習慣ごはんの調味料を麦味噌に変更してみるのもいいかも?
麦味噌の使い方
麦味噌は米味噌と違って風味や香りに特徴があるため、風味を楽しみながら食べるのに向いています。
もちろん加熱料理もできないわけではありませんが、人気なのはこんな食べ方です。
一つずつ見ていきましょう。
風味を生かしてそのまま野菜につけて食べる
そのままきゅうりやなすにつけて食べると、口全体に麦の甘い風味がかおります。
何とも言えない優しい味なんです…!
この優しい味を活かして、かき氷にする方もいるほど!
ちょっと気になる!やってみたいなぁ…笑
冷や汁やさつま汁などの郷土料理にする
麦味噌のいちばん人気の食べ方は、やはり地元の郷土料理です。
全国的に人気があるのは、「冷や汁」や「さつま汁」などの汁物ですね。
これは、鉄板!!おいしそう~~~!
麦味噌の保存方法
麦味噌は、米味噌と同じく長期保存が可能です。
賞味期限
麦味噌の賞味期限は、メーカーによって異なります。
ほとんどの麦味噌は3~12か月程度と幅広く、長期保存が可能な発酵食品ですが、正確な賞味期限は各メーカーに確認することをおすすめします。
保存方法
保存方法は冷蔵・常温、ともに問題なく可能です。
直射日光が当たるところは避けて、涼しいところで保管しましょう。
前述したように糖が多いため、保存しているうちに色が変わっていく可能性が高いことは注意しておきましょう。
腐っているわけではないので、安心してね。
まとめ:麦味噌はまずい・体に悪いってホント?
麦味噌にまつわるウワサのうち、「まずい」か「まずくないか」は、個人の好みの問題なので、何とも言えません。
ただわかったのは、まずいと言っている人がいる一方で、おいしいとびっくりしている人も多いこと!
麦味噌の出荷量比率は3.8%しかないので、麦味噌がよく食べられる九州をはじめとする地域になじみがない方はあまり知らないケースが多く、その味になじみがないことも、「まずい」と言われやすい理由のようです。
さらに、体に悪いと言われやすい理由は、麦味噌特有の「黒条線(こくじょうせん)」の存在が関連しているかもしれません。
黒条線
=大麦の種子を形成する時に栄養分の通り道となる部分
黒条線を「ゴミ」や「異物」と勘違いしてしまった方の問い合わせなどもあるようなので、悪いイメージの原因になっている可能性があります。
麦味噌に関する「まずい」「体に悪い」などのウワサは、麦味噌があまり一般的ではないことによる誤解であることがわかりました。
むしろ、麦味噌の味やにおいに慣れたら、今ニガテとおっしゃる方でも大ファンになってしまう可能性があります。
特に塩分がひかえめなので、食事の塩分を減らしたい人は一度トライしてみることをおすすめします。
参考にしてみてね。
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参考文献
(※1)みその種類別出荷数量<全味工連集計> https://zenmi.jp/data/seisansyukka/2000-2021syuruibetusyukkaHP.pdf
(※2)味噌の歴史と機能成分(株式会社ますや食品研究所)
https://www.srut.org/wp/wp-content/uploads/vol14-06.pdf
(※3)麦味噌麹のβ-グルカンおよびβ-グルカナーゼ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/96/8/96_8_520/_pdf/-char/ja
(※4)大麦β-グルカンは中程度に低分子化しても糖・脂質代謝を改善
https://mugi-lab.jp/topics/detail37.html
(※5)大麦β-グルカンの機能性について(大妻女子大学)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/26/1/26_3/_pdf
(※6)Salt reduction|世界保健機関(WHO)
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/salt-reduction