【この記事で解決できるお悩み】
管理栄養士や栄養士って、将来なくなる職業なの?
AI化によって、管理栄養士の仕事内容はどう変わる?
生き残る管理栄養士と就職先がない管理栄養士の違いは?(必要スキルや心構え)



この記事では、こんなお悩みを解決します!
管理栄養士と言えば、教育機関から病院・高齢者施設などの医療現場、スポーツ関連施設や行政など、いろんな場所から求められる、人気職業のひとつ。
その一方で「管理栄養士は就職難で将来性がない」などネガティブな職業イメージがある方も多いみたい。
そこで今回は、管理栄養士の将来性を徹底解説!
AI化によって、管理栄養士の仕事内容はどう変わるのか、生き残れる管理栄養士になるための必要スキルや心構えにはなにがあるのか、じっくりと整理していきましょう。
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この記事を書いた人:
腸活研究家 長谷川ろみ
発酵食品にハマり、ダイエットなしで12㎏減。痩せたことをきっかけに腸を愛でる生活に目覚める。重度の便秘から解放され、腸活研究家として活動開始。今では発酵ライフ推進協会通信校校長を務め、昔の自分と同じ悩みを持つ方に向けて腸や菌のおもしろさを発信中。詳しくはこちら
管理栄養士が将来なくなると噂される理由


管理栄養士が将来なくなると噂される理由として、以下の3つが挙げられます。
一つずつ見ていきましょう。
試験の合格率が高く、誰でもなれるから
管理栄養士が将来なくなると恐れられる理由のひとつに、「試験の合格率が高く、誰でもなれるから」というウワサがあります。



あくまでウワサね!実際に栄養士と管理栄養士の合格率を見てみましょう。
厚生労働省の第37回管理栄養士国家試験の合格発表資料(※1)によると、合格率は56.6%です。
受験者数:16,351名
合格者数:9,254名
合格率:56.6%



管理栄養士の合格率は、毎回約60%程度のようです。試験の合格率が特に高いわけではなさそうですね…
管理栄養士の合格率が高いと勘違いされる理由のひとつに、栄養士と管理栄養士が混同されていることが考えられます。
管理栄養士は国家資格試験を受け、合格してはじめて資格が得られますが、栄養士は養成施設を卒業すると試験はなしで取得できます。



管理栄養士の試験の合格率が高く、誰でもなれるからというのはウソですが、栄養士に限っては養成施設卒業者であれば、100%栄養士になることができます!
給料が低く、職業としての価値が低いから
管理栄養士が将来なくなると恐れられる理由の二つめは、「給料が低く、職業としての価値が低いから」というウワサです。
厚生労働省が報告している、令和3年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)(※3)を見てみましょう。
令和3年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)
職業 | 時給(円) |
---|---|
医師 | 4,179 |
獣医師 | 1,361 |
薬剤師 | 1,664 |
看護師 | 1,424 |
臨床検査技師 | 1,243 |
理学療法士 | 1,282 |
歯科衛生士 | 1,187 |
栄養士 | 1,050 |
保育士 | 1,149 |
幼稚園教員,保育教諭 | 1,039 |
小・中学校教員 | 1,823 |
高等学校教員 | 1,511 |
大学教授(高専含む) | 3,409 |



たっ…たしかに…これは給料が低いと言われてもしょうがないかも…。
管理栄養士は他の職業と比較すると、時給が低めです。
しかし、一方でいろんな施設や環境で働くことができ、その環境によって賃金に幅がでやすいという特徴があります。



これは、自分で自分の働く環境を変えやすい資格であるということの裏返し。給与も自分で変えられるかもしれません。
保育園などの教育施設では時給が低めですが、食品メーカーや介護施設では少し上がり、さらに給食センターなどで勤務すれば、さらに時給は上がります。
決して、職業として価値が低いわけではありません。
人数が多く、需要と供給があっていないから
厚生労働省が公開している、栄養士・管理栄養士免許交付数(※2)を見ると、以下のとおり。
【令和3年度 栄養士免許交付数】
累計総数:1,148,982
免許交付数:16,771
【令和3年度 管理栄養士免許交付数】
累計総数:274,377
免許交付数:10,196
毎年、約1万人が管理栄養士になっていることがわかります。



この毎年1万人が、一部では「供給過多なのでは?」と言われているんです。
しかし、実際に全国栄養士養成施設協会が発表している管理栄養士の就職率だけを見ると、約90%(※4)と、決して低くはありません。
管理栄養士の就職率が高く見えるのは、就職先が多いというのが理由のひとつです。
【管理栄養士の主な就職先】
・学校や保育園などの教育機関
・病院や保健所・保健センターなどの医療機関
・介護福祉施設勤務
・食品メーカー/医薬品メーカー勤務
・料理研究家/フードコーディネーター/フードライター活動
・美容関係企業勤務
・調剤薬局、ドラッグストア勤務
・スポーツ関係企業勤務
・研究機関など
「管理栄養士が余っている」と言われがちなのは、募集人数が少ない学校や保健所などの公的機関や病院勤務をするのが難しいから。
管理栄養士資格を取得しても、理想どおりの働き方をする人は多くないため、「管理栄養士が余っている」「管理栄養士は仕事がない」と、言われやすいのです。
「自分が理想とする働き方がしたい!」「自分にしかできない仕事がしたい!」と思うなら、管理栄養士という資格に甘えず、長期的なキャリアアップ計画を立て、スキルアップをしていくことが必要です。



就職先やお給料にこだわらなければ、9割の管理栄養士が就職できます。でも、理想的な仕事ができるかどうかは、自分次第!
管理栄養士が将来安泰な理由


一方で、管理栄養士は他の職業に比べると、将来安泰であると言われています。
その理由は、以下のとおり。
一つずつ見ていきましょう。
AI化できない職業だから
AIやコンピューターの発達によって、ヒトの仕事は少しずつ減っていくと言われています。
でも、管理栄養士や栄養士は、コンピューターでは対応できない部分が多く、代替しにくい(AI化しにくい)職業であるという考え方が濃厚です。
オックスフォード大学のベネディクト博士らの研究(※5)によると、702の職種のうち栄養士はコンピューターに代替されにくい仕事は、以下のとおり。
【コンピューターに代替されにくい仕事】
レクリエーションセラピスト
メカニック、修理担当者
緊急事態の管理監督者
メンタルヘルスと薬物利用者のケア担当者
聴覚医療従事者
作業療法士
義肢装具士
ヘルスケアソーシャルワーカー
口腔外科
消防監督者
栄養士
施設管理者
振り付け師
セールスエンジニア
内科医・外科医
教育コーディネーター
心理学者
警察・探偵
歯科医師
小学校教員



栄養士が、コンピューターに代替されにくい仕事にランクインしています!
コンピューターに代替されにくい仕事の共通点は、ヒトとのコミュニケーションが必要である点です。
栄養士や管理栄養士は、栄養計算や事務作業の一部はコンピューターに代替できる仕事を含みます。
しかし、そのすべてがマニュアルどおりの機械的な仕事ではありません。
同時に相手の人生や心に寄り添う場面も多く、対象者への丁寧なヒアリングや、心や身体のケアも同時に必要になります。
ヒトとのふれあいがないと成り立たない仕事であるため、完全なAI化は難しいでしょう。
でも、AI化は決して悪いことではありません。
仕事のもとになるデータ抽出や計算、基本的な教育はAIに任せて、応用業務を管理栄養士が行うなど、適格に分担することで、より高度なサポートができる可能性があります。
AI(コンピューター) | 管理栄養士(ヒト) |
---|---|
献立・レシピの新規作成 献立・レシピの栄養計算・分析・図解作成 献立・レシピの改善/アドバイス/サポート | 厨房での調理/料理の提供などの調理実務 食に関する研究/エビデンスづくり 管理栄養士・栄養士の育成/指導 | 栄養計算・分析データをもとにした個別指導/講師業



管理栄養士にとっても、AI化は大きなメリットがありそうですね。
超高齢化社会に必要な職業だから
管理栄養士の仕事として、近年増えているのが、介護福祉施設や介護老人保健施設での需要です。
今後高齢者がどんどん増えていくことが予想でき、介護福祉施設や介護老人保健施設での管理栄養士の需要がますます高まっています。
今は、管理栄養士の就職先は、病院(33%)、企業(26%)、給食会社等(12.5%)、介護保険施設(10.4%)、児童福祉施設(6.0%)、社会福祉施設(3.9%)と続きますが、今後は介護保険施設や社会福祉施設などの割合が増えてくることが予想(※4)できます。



超高齢化社会への準備は、管理栄養士にとっても緊急課題のひとつ!
日本の食文化が世界的に注目されているから
2013年、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本の食文化が世界的に注目されるようになりました。(※6)
【食に関する無形文化遺産の例】
2010年:メキシコの伝統料理
2010年:地中海料理
2011年:トルコの祭礼料理「ケシケキ」の伝統
2013年:日本の和食;日本人の伝統的な食文化
2013年:韓国のキムジャン(キムチの製造と分配)
日本の和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのは、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた習わしが注目されたこと、また世代を超えて受け継がれてきた慣習であることが理由です。
これから先も世代を超えて受け継いでいく必要があることから、管理栄養士が行う食育や世界への発信活動に期待されています。


管理栄養士が生き残っていくために必要なこと


管理栄養士は、たしかに病院や教育機関、そして行政で食事の管理をするという一般的なイメージに合った仕事をしようとすると、狭き門かもしれません。
しかし、管理栄養士の仕事の幅は広く、コンピューターにも代替されにくい、大事な仕事です。
何も考えずにただ勉強しているだけだと就職先に不安や不満が生まれるのは、あたりまえ。
これから管理栄養士が生き残っていくために必要なことを整理してみましょう。
一つずつ見ていきましょう。
クリエイティブな人材になること
管理栄養士は、ただ栄養に詳しい、栄養計算がされた献立が作れる人ではダメ。
栄養計算だけなら、もうコンピューターがやってくれますからね。
ぜひ、あなたにやってもらいたいと思われるような、「〇〇さんにしかできない仕事をする」ことを目指して、クリエイティブな管理栄養士になることが必要です。



管理栄養士の中でも、人気の料理研究家になると、収入は一気に増えるかもしれません。バズレシピで有名になった、料理研究家のリュウジさんみたいな発想力が必要かも?!笑
そのためには、嫌われがちな肉体労働である、厨房業務などの実務のスキルアップもとても重要。
さらに汎用スキルであるコミュニケーション力や人間力のスキルアップも意識していきたいところです。
IT知識とコミュニケーションスキルを高めること
管理栄養士に関わらず、わたしたちの仕事は年々AI化されていきます。
専門知識が必要だと思っていた栄養学や栄養計算などの事務作業は、近いうちにコンピューターがすべてしてくれることになるでしょう。
そうなった時にその状況が理解できる程度のIT知識や、その情報をかみ砕いて説明できる知識が必要です。
また、管理栄養士が計算をコンピューターに任せられるようになれば、その時間を使って、子ども・学生・高齢者・スポーツ選手・患者などの対象者に向き合い、より深いヒアリングをしたり、信頼してもらえる人間性や発信力を育てる必要があります。
時には自ら営業をしたり、セミナーを主催したり、新しいサービスを構築する必要もあるでしょう。



同じ管理栄養士でも人によってぜんぜん違う仕事をしている時代がきそう!なんかわくわくしてきたぞ…笑
自分の専門分野のスキルアップを意識すること
管理栄養士という資格を持った人は、今現在、約30万人います。
これからますます基本的な事務作業はコンピューターがしてくれるので、自分にしかできない仕事をするのであれば、「管理栄養士×〇〇」といった、専門分野の知識を得ていくことが必須になっていきます。
【専門分野の例】
管理栄養士×食育・子ども支援
管理栄養士×発酵・日本文化支援
管理栄養士×スポーツ・アスリート支援
管理栄養士×高齢者支援
例えば、和食の世界進出をより一層進めるためには、将来を支える子供たちの食育が必要です。
また、古くから伝わる和食のコアな特徴と言えば、麹を使った発酵文化。日本にしかない独自の発酵文化を伝える人材の育成もとても大切です。
さらに、深いコミュニケーションをとりながら栄養管理をするにしても、対象者がスポーツ選手の場合と高齢者の場合では、必要知識が違います。
広く浅い知識や技術を持っているだけでは、コンピューターと同じ。
これからは、より深い、創造性のある仕事をするために、自分の専門分野を決めて、スキルアップしていくのがおすすめです。



体系的に基本知識を得るために、管理栄養士のほかにそれぞれに関係する資格をとってみるのもおすすめ!自分の好きな分野・興味のある分野が見えてくるよ。


まとめ:管理栄養士は将来なくなるの?AI化でどうなる?


管理栄養士は、将来なくなると噂されやすい職業です。
その理由は、以下の3つ。
でも、これは単なる管理栄養士のイメージで、事実とは異なります。
管理栄養士は他の職業に比べると、コンピューターにはできない人間らしい力が必要な職業であり、自分の頑張り次第では、将来安泰だとも考えられる、立派な資格なんです。
もちろん、ただぼーっとしているだけではダメ。
これから管理栄養士が生き残っていくために必要なことを自分なりに整理して、理想とする管理栄養士をしっかりイメージしながら、前に進みましょう。
大事なことは、以下の3つ。
参考にしてみてね。


参考文献
(※1)第37回管理栄養士国家試験の合格発表|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32136.html
(※2)栄養士・管理栄養士免許交付数の推移|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001075978.pdf
(※3)令和3年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000980675.pdf
(※4)令和3年度:栄養士養成施設の卒業生の就職実態|全国栄養士養成施設協会
https://www.eiyo.or.jp/about/shushoku.html
(※5)The Future of Employment: How susceptible are jobs to computerisation?
http://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/publications/view/1314
(※6)「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されています|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/