【この記事で解決できるお悩み】
ザワークラウトと酢キャベツの違いはなに?
失敗しないかんたんな酢キャベツの作り方をおしえて



この記事では、こんなお悩みを解決します!
「ザワークラウト」と「酢キャベツ」は、両方ともキャベツを使った酸っぱい漬物です。
しかし、厳密にいうと別のもの。その作り方や中に入っている発酵菌、栄養素が微妙に違います。
今回は、そんな「ザワークラウト」と「酢キャベツ」の違いを発酵のプロが徹底解説!
「ザワークラウト」と「酢キャベツ」の違いを整理して、自分に合うキャベツのおいしい食べ方を見つけましょう。
発酵を体系的に勉強したくなったら…
発酵ライフ推進協会オンライン校へ
\仕事に繋がる無料サポートもたくさん(*´ω`*)/
この記事を書いた人:
腸活研究家 長谷川ろみ
発酵食品にハマり、ダイエットなしで12㎏減。痩せたことをきっかけに腸を愛でる生活に目覚める。重度の便秘から解放され、腸活研究家として活動開始。今では発酵ライフ推進協会通信校校長を務め、昔の自分と同じ悩みを持つ方に向けて腸や菌のおもしろさを発信中。詳しくはこちら
ザワークラウトと酢キャベツの違いは、発酵してるかどうか


「ザワークラウト」と「酢キャベツ」のいちばん大きな違いは、「乳酸発酵しているかどうか」です。
ザワークラウト=乳酸発酵している
酢キャベツ=乳酸発酵していない
でも、乳酸発酵しているからザワークラウトが健康や美容に良いという話をしたいわけではありません。
健康や美容に良いのがどっちかは、人によって違います。
ここでは、「ザワークラウト」と「酢キャベツ」の6つの違いを解説します。
一つずつ見ていきましょう。
発祥の地がドイツor日本
ザワークラウトは、ドイツ生まれの発酵食品。
ドイツ語で「酸っぱいキャベツ」を意味する言葉です。
ザワー=酸っぱい
クラウト=キャベツ



ザワークラウトはドイツ生まれだけど、フランスやオランダなどヨーロッパ全域で食べられているポピュラーな発酵食品だよ。
その歴史は古く、大航海時代(16世紀~)には、長い船旅の栄養失調を回避するためのビタミン源として注目されていました。
一方、酢キャベツは、日本で生まれたおかずです。
昔から常備菜として食べられていますが、近年そのかんたんさやダイエット効果に注目が集まり、メディアなどで特集を組まれることが多い健康メニューになっています。



テレビ番組「世界一受けたい授業」で話題になりましたよね!そこから、一般的に知られるようになりました。


使われている材料が違う
ザワークラウト=キャベツ+塩+鷹の爪などのスパイス
酢キャベツ=キャベツ+酢+塩(+砂糖)+鷹の爪などのスパイス
ザワークラウトと酢キャベツは、両方ともキャベツと塩を使っています。
また、そこにプラスする香辛料やスパイスも同じです。



メインのキャベツが一緒+漬物だから、そりゃ似ているよねぇ?
大きく違うのは1点だけ。
「酢」を入れるか、入れないか。
ザワークラウト=酢を入れない
酢キャベツ=酢を入れる
ザワークラウトは、酢を入れないにも関わらず酸っぱくなります。
この酸味の正体は、乳酸菌の発酵活動によってつくられる乳酸です。
一方、酢キャベツは、すでに発酵済みの酢を入れて作るので、酸っぱくてあたりまえ。
キャベツ自体は発酵しておらず、すでに発酵の過程を経て完成した「酢」が入っています。



両方ともいちお発酵食品です。酢キャベツにいたっては、材料に発酵食品が含まれるってことだけどね。


発酵のタイミングが違う
ザワークラウトと酢キャベツは、どちらも発酵食品ですが、発酵のタイミングが違います。
ザワークラウト=キャベツを乳酸発酵させてつくる
酢キャベツ=発酵させてできた酢とキャベツを混ぜて作る
ザワークラウトは、キャベツについた自然由来の植物性乳酸菌を使って発酵させたキャベツの漬物。
発酵の過程で、乳酸などの酸が作られます。
乳酸菌が多く使われているため、乳酸発酵がメインです。
一方、酢キャベツは、それ自体は発酵していません。
しかし、発酵の過程を経て作られた酢が含まれています。



酢は、発酵食品です。だから…厳密にいうと酢キャベツは、「発酵食品が材料に使われている食べ物」ということになります。
酢は、アルコール発酵と酢酸発酵をさせることで完成する発酵調味料で、酢酸がたっぷり含まれています。
ザワークラウト=発酵あり(乳酸発酵)
酢キャベツ=発酵なし
酢=発酵あり(アルコール発酵、酢酸発酵)



ザワークラウトに多いのは乳酸、酢キャベツは酢酸ですが、実は他にもいろんな酸が入っているので、厳密に乳酸しか入っていないとか、酢酸しか入っていないわけではありません。
酢には、酢酸の他にも乳酸やコハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アミノ酸、エステル酸など多くの酸が含まれていると言われています。(※5)
完成までの時間が違う
ザワークラウト=完成まで少なくとも数日必要(発酵必要)
酢キャベツ=30分程度で食べられる(混ぜるだけ)
健康・美容効果が高いザワークラウトと酢キャベツですが、作る工程が違い、特に完成するまでの時間は大きく違います。
ザワークラウトは発酵する時間が必要なので、完成までに少なくても4~5日は必要です。
一方、酢キャベツは酢にキャベツを入れてなじませるだけなので、1時間以内に食べることができます。



「今すぐ、野菜のおかずがほしい!」って言う時は、ザワークラウトはムリですね。酢キャベツのほうが小回りが良いです。
味やアレンジ法が違う
ザワークラウト=発酵の風味があり、強すぎない酸味。アレンジしやすい
酢キャベツ=さっぱり、すっきり。使うお酢によって味が違う
ザワークラウトは、発酵食品独特の発酵臭がしますが、酢キャベツの場合は使うお酢に味が依存するので、発酵臭が少ないこともありえます。



どちらをおいしいと感じるかは、好みの問題です。好きなほうを習慣的に食べるのがおすすめです。
ザワークラウトのほうが酸味がやわらかくなりやすいので、いろんな料理に使いやすいというメリットがあります。(ただし、酢キャベツも使うお酢によっては酸味がやわらかくなるので、一概に酢キャベツの酸味が強いとも言えません)
ザワークラウトも酢キャベツも、どちらもわたしたちの体をリセットしてくれる力があります。
ぜひ、好きな方を継続的に食べてみてください。


ザワークラウトと酢キャベツに期待される効果効能


ザワークラウトと酢キャベツは、材料や作り方が全く違う食べ物です。
そのため、期待される効果も全く違うのがおもしろいところ。
ザワークラウトと酢キャベツの効果の違い
ザワークラウトは、主に乳酸菌と食物繊維による効果、酢キャベツは酢酸やクエン酸による効果が大きいと言われています。
ザワークラウト=乳酸菌や乳酸がたっぷり、腸内環境の改善に吉
酢キャベツ=酢酸やクエン酸がたっぷり、疲労回復・血流改善に吉
ザワークラウト | 酢キャベツ | |
---|---|---|
酸味のもと | 乳酸菌が作る乳酸 | 酢 (酢酸・クエン酸) |
酸味の質 | さわやかな酸味 | つんとした強い酸味 |
完成までの期間 | 1週間程度 | 数時間程度 |
手作りの難易度 | 発酵させるためコツが必要 失敗すると、発酵しなかったり、腐敗する可能性がある | 混ぜるだけなのでコツはいらない 酢とキャベツを混ぜるだけなので、ほぼ失敗なし |
期待される効果効能 | 腸内環境を整える、便秘解消、胃腸の健康維持、美肌、ダイエット (主に乳酸菌+キャベツの食物繊維の効果効能) | 血液をサラサラにする、血中コレステロールを下げる、血糖値を緩やかに上昇させる、疲労回復、便秘解消、美肌、ダイエット (主に酢+キャベツの食物繊維の効果効能) |
ザワークラウトも酢キャベツも、両方いろいろな酸が含まれているので、極端に期待される効果効能が違うわけではありません。
しかし、一般的にザワークラウトは乳酸菌や乳酸が多いことが知られているのもあり、腸内環境の改善効果が期待されています。
そして、酢キャベツは酢に含まれる酢酸やクエン酸の効果として、疲労回復や血液をサラサラにする効果が期待されています。



ザワークラウトは腸内環境の改善に関係する報告が多いんですよね。
腸内環境改善効果なら…
ザワークラウトと酢キャベツの両方に期待されるのが、腸内環境の改善効果です。
キャベツに含まれる食物繊維量は、以下のとおり。
量 | |
---|---|
水溶性食物繊維 | 0.4g |
不溶性食物繊維 | 1.4g |
総量 | 1.8g |
水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサとなり、腸内環境を善玉菌が住みよい環境に整えてくれる働きをし、不溶性食物繊維は便のかさましをして、体の外に老廃物を出しやすくします。
さらに、ザワークラウトには乳酸菌が含まれていて、酢キャベツにはお酢が含まれているので、ダブルの効果が期待できます。
ザワークラウトに含まれる乳酸菌は、発酵の時期によって大きく異なります。
通常の発酵においては初期に出現してくる乳酸菌の大部分は乳酸球菌の Enterococcus,Leuconostoc, Pediococcus属菌などである。乳酸球菌の増殖により乳酸が蓄積され pHが低下してくると酸に弱い雑菌の多くは減少,死滅し乳酸球菌が優勢となってくる。乳酸球菌の増殖に続けて増殖してくるのは乳酸梓菌の Lactobαcillus属菌である。乳酸梓菌の増殖によってさらに乳酸が蓄積し, pHが低下すると酸に対する抵抗性が乳酸梓菌よりも弱い乳酸球菌が次第に減少するようになり,発酵が進行するにつれてほとんど乳酸梓菌が占めるようになる。これが一般的なザワークラウトにおける微生物叢の変化である
(※6)発酵漬物における乳酸菌のはたらき



Lactobαcillus属はプロバイオティクス効果があると注目されている菌のひとつだよ。
過敏性腸症候群の改善なら…
2018年にデンマークで行われた研究(※1)によると、乳酸発酵をしたザワークラウトは、過敏性腸症候群(IBS)患者の方の症状を緩和することがわかりました。
この研究では、乳酸発酵をしたザワークラウトの乳酸菌をサプリメントとして6週間毎日摂取したところ、症状の改善が確認できたそうです。
おもしろいのは、この乳酸菌のサプリメントを作る際に、低温殺菌して乳酸菌が死菌になっても同じ効果が得られたことでした。



ザワークラウトの乳酸菌は死んじゃっても、腸内環境にいる腸内細菌のバランスを変化させる力があり、過敏性腸症候群の緩和に役立ったことがわかったんです。スゴイ!
この研究から、ザワークラウトの乳酸菌はプロバイオティクス(=菌自体)としての働きはもちろん、プレバイオティクス(=腸内細菌のエサ)としての働きも注目されることになりました。



これは小さな研究だし、まだまだ研究は必要だけど、ザワークラウトの乳酸菌の腸内環境改善効果への期待が高まりますね!
乳がんリスクの低下なら…
他にも2021年にアメリカのミシガン州立大学で行われた研究(※2)によると、ザワークラウトを食べると乳がんのリスクが減る可能性があるという報告があったり、2018年にポルトガルのリスボン大学で行われたザワークラウトの乳酸菌に関する研究(※3)では、ザワークラウトの乳酸菌は酸に強い乳酸菌が多いことも報告されています。
一方、日本人にとっては古くからお世話になっている発酵調味料のお酢。
お酢の主成分は、酢酸です。
乳酸と酢酸は、両方とも腸内環境に存在する有機酸のひとつで、善玉菌が暮らしやすい腸内環境を作ってくれる成分です。



腸の中のはなしで言うと、腸内にいるビフィズス菌は、酢酸を作ることができる有名な菌です。ビフィズス菌を腸内にたくさん飼っていると、酢酸がたっぷりの健康的な腸になりますよ~!
お酢には酢酸はもちろん、乳酸やアミノ酸など複数の種類の酸が含まれているため、その健康効果も注目されていて、研究が繰り返されています。
血流の改善なら…
ここまでは、ザワークラウトの効果をお伝えしてきました。



発酵食品としての効果です。
しかし、酢キャベツだって健康効果がないわけではありません。
逆に酢を摂取することによる効果が期待できます。
例えば、2010年に日本で行われた黒酢の研究(※4)によると、1日あたり50ml を1カ月間摂取するだけで、血液がさらさらになり、血流が改善されたことが報告されています。



お酢には健康や美容効果に関するデータが多いので、毎日大さじ一杯(15ml)程度をとることを推奨されることも多いですよね。
習慣的にお酢をとることができ、さらに食物繊維も一緒にとれる酢キャベツは、健康効果の高いおかずのひとつだと言えそうです。



発酵していないからといって、軽視するのはもったいないですよね。お酢はお酢で合うと感じる人は多いです。
酢キャベツの作り方


酢キャベツの基本的な作り方は、以下の通りです。
材料
キャベツ:300g
米酢:100ml
塩:小さじ1
鷹の爪:1本



ここにお砂糖を入れる方もいるし、鷹の爪の代わりに好きなスパイスを入れる方もいます。お酢は米酢よりもりんご酢や黒酢のほうが、酸味が柔らかくなります。自分が好きな味を探してみてね。
作り方・レシピ
➀キャベツを水洗いして、しっかり水をきる
➁キャベツを千切りにする
➂ジッパー付きビニール袋にキャベツと塩を入れて、しんなりするまでもむ
➃酢と鷹の爪を入れて、さらにもむ
➄30分~半日ほど漬けたら完成



酢キャベツはキャベツをしっかり洗います。乳酸菌が落ちちゃってもいいから洗えるんですよね。発酵させる場合は洗っちゃダメです。この違いがおもしろいよね。笑


まとめ:ザワークラウトと酢キャベツの違いを解説!もう失敗しない


「ザワークラウト」と「酢キャベツ」のいちばん大きな違いは、「乳酸発酵しているかどうか」です。
ザワークラウト=乳酸発酵している
酢キャベツ=乳酸発酵していない
細かく整理すると、6つの違いがあります。
発酵しているほうが健康や美容にいいと思っている方もいますが、一概にそうとも言えません。酢キャベツに使うお酢にもさまざまな健康・美容効果が認められています。
どっちが体にいいかは人によって違うので、味が好きなほうや効果を感じるほうを継続的に食べてみてくださいね。
酢キャベツの基本の作り方は、以下の通りです。
参考にしてみてね。
発酵を体系的に勉強したくなったら…
発酵ライフ推進協会オンライン校へ
\仕事に繋がる無料サポートもたくさん(*´ω`*)/
参考文献
(※1)Lacto-fermented sauerkraut improves symptoms in IBS patients independent of product pasteurisation – a pilot study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30256365/
(※2)Cabbage and Sauerkraut Consumption in Adolescence and Adulthood and Breast Cancer Risk among US-Resident Polish Migrant Women
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34682540/
(※3)Putative probiotic lactic acid bacteria isolated from sauerkraut fermentations
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30192827/
(※4)Antioxidant activity of the new black vinegar “IZUMI”
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21125203
(※5)酢と調理
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1968/7/2/7_58/_pdf/-char/ja
(※6)発酵漬物における乳酸菌のはたらき
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010911964.pdf
(※7)プロバイオティクスとして用いられる乳酸菌の分類と効能
https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM1110_01.pdf