胃腸の調子が悪い時、医師や家族から言われたことがあると思います。
「消化に良い食べ物を食べてね。」
あたりまえのように言われるこの言葉、ちょっとわかりにくいですよね。
一方で、同じように胃腸の調子が悪い時や風邪を引いたとき、うどんは消化に良い食べ物の代表として食べることをすすめられることが多い食材です。同じ麺類であるそばは、健康によいと言われながらも、消化に良い食べ物としてはあまりおすすめされません。
今回は、消化に良い食べ物とはなにか、言葉の意味を整理しながら、うどんとそばはどちらが消化に良い食べ物なのか、整理してみましょう。
うどんは何でできている?
まず、消化に良いかどうか考える上で大事なのは原材料です。うどんがなにでできているか、おさらいしてみましょう。
うどんの原材料
うどんは、小麦粉と塩と水を練り上げたものです。
うどんの種類
うどんには「手打ちうどん」と「手延べうどん」の2種類があります。
手延べうどん=薄力粉を使用
小麦粉には、含まれているタンパク質の量によって、3種類があります。
中力粉=タンパク質量が中程度で、粒が普通の硬さの小麦
薄力粉=タンパク質が少なく、粒が柔らかい小麦
うどんは、一般的には中力粉を使って作ります。中力粉を使って、強く練り上げ、独特のコシを出したうどんを「手打ちうどん」といいます。一般的には太いものが多く、歯ごたえがしっかりしています。
一方、薄力粉を使って、1本の紐のように長く伸ばして作るうどんを「手延べうどん」といいます。つるつるとしたのど越しが特徴で「手打ちうどん」と比較すると、柔らかいものが多いといわれています。手延べは「手延べそうめん」も有名ですね。
うどんの地域比較
うどんをよく食べる地域と言えば、香川県。香川県と言えば、「讃岐うどん」が有名です。讃岐うどんの特徴は、強いコシにあります。強いコシを出すために中力粉を使ったうどんが好まれます。
一方、福岡や大阪もうどんをよく食べるので、福岡発祥のうどんのことを「福岡うどん」、大阪発祥のうどんのことを「関西風うどん」と呼びます。福岡うどんと関西風うどんは、讃岐うどんに比べて、とにかく柔らかいのが特徴です。
福岡うどんと関西風うどんも基本的には中力粉を使うものが多いですが、柔らかくなるまでゆでる文化があります。
うどんの栄養や効能
日本食品標準成分表によるうどんの食品成分は、以下のとおりです。うどんは一般的には炭水化物の一種に分類されます。
エネルギー:95kcal
たんぱく質:2.6g
脂質:0.4g
炭水化物:21.6g
食物繊維:1.3g
そばは何でできている?
次にそばです。そばがなにでできているか、おさらいしてみましょう。
そばの原材料
そばは、うどんと比べるとかなり複雑です。
基本的に、そばはそば粉でつくります。しかし、蕎麦を打つ時にまとめやすくするために、小麦粉などの「つなぎ」を混ぜて練り上げます。商品によっては小麦粉以外にも、長いも、海藻、卵など…つなぎはバラエティに飛んでいます。だからそばは白っぽいもの、黒っぽいもの、緑っぽいものなど、いろんな色があるんですね。
そばの種類
そばにもうどんに負けないぐらいいろんな種類がありますが、そば粉の割合によって、違う呼び名があります。
九割そば→小麦粉1割、そば粉9割
十割そば→そば粉10割
小麦粉もそば粉も成分はほとんどがでんぷんで炭水化物なのにはかわりがありませんが、そば粉にはビタミン、ミネラル、ポリフェノール、食物繊維などが小麦粉よりたっぷり含まれています。
そばの栄養や効能
日本食品標準成分表によるそばの食品成分は、以下のとおりです。そばは一般的には炭水化物の一種に分類されます。
エネルギー:130kcal
たんぱく質:4.8g
脂質:1.0g
炭水化物:26.0g
食物繊維:2.9g
そばはうどんに比べると、たんぱく質が豊富です。
うどんとそばは、どっちが消化に良いの?
うどんとそばを比較した場合、消化に良いのはやっぱり「うどん」です。
「消化に良い」とは?
消化に良い食べ物とは、消化時間が短い食べ物(=早く消化できる食べ物)を指します。
消化に悪い=消化時間が長い
タンパク質、炭水化物、脂質の中で消化に良いのはどれ?
3大栄養素であるタンパク質、炭水化物、脂質の中で、いちばん消化が良いのは、炭水化物です。反対に、消化するのにいちばん時間がかかる栄養素は脂質です。
炭水化物:2~4時間
タンパク質:4~6時間
脂質: 7~8時間
タンパク質が多い肉や魚は、米やパンなどの炭水化物と比べると消化時間が長くなります。また脂質の多い揚げ物(天ぷらやフライ、唐揚げなど)は、タンパク質が多い肉や魚よりも、より消化時間がかかります。
また腸内環境を整えるキノコ、海藻、根菜類など食物繊維の多い食品は、消化に時間がかかるので、「消化に悪い食べ物」に分類されます。
刺激の強い香辛料や塩分の多いものも胃液の分泌を増やし、胃の粘膜を荒らすので、「消化に悪い食べ物」に分類されます。
うどんVSそばは、炭水化物VS炭水化物
うどんとそば、どちらのほうが消化に良い食べ物かについては、一般的には「うどん」だと言われています。なぜなら消化に良い炭水化物が多く、消化に悪いタンパク質や脂質、そして食物繊維が少ないからです。
うどんは、胃の中に留まる時間が短くなります。また、うどんの中でもタンパク質量が少ない薄力粉を使った手延べうどんは、タンパク質量が多い中力粉を使った手打ちうどんより、消化が良くなります。
一方そばは、うどんに比べて食物繊維がやや多く、食感も比較的硬いため、急いでつるりと食べてしまうと、胃の中に長くとどまり、おなかに負担をかけてしまうことがあります。
消化に良い食べ物を選ぶメリットとデメリット
胃腸の調子が悪い場合は、消化に良い食べ物を選びましょう。しかし、体調に問題がない時は、消化に良い食べ物ばかりを選ぶ必要はありません。なぜなら、消化によい食べ物は基本的に糖質が多く、それだけでは体に必要な栄養素のバランスが悪くなってしまうからです。
消化に良い食べ物の特徴
体調が悪く、胃腸が疲れている時は、あまり消化活動にエネルギーを使わないように、消化が良い食べ物を選びましょう。
2:炭水化物が多いもの
3:油脂が少ないもの
4:食物繊維が少ないもの
消化に良い食べ物を選ぶメリット
消化が良い食べ物は、消化が早く胃に負担がかかりにくいため、体調が悪い時や胃腸が疲れている時に選びましょう。
消化に良い食べ物を選ぶデメリット
消化が良い食べ物は、炭水化物が多いので血糖値が急激に上昇しやすく、脂肪を体内にため込みやすくなります。そのため、肥満や糖尿病リスクが高くなります。
血糖値が上がるので瞬間的には満腹感を得やすいですが、すぐに空腹感を感じるため、ダイエット中の方は注意が必要です。
消化に悪い食べ物の特徴
心も体も元気で、エネルギーがたっぷりある時は、消化活動に使うエネルギーの確保も容易なので、消化の良さよりも栄養バランスを重視した食事を選びましょう。
2:タンパク質が多いもの
3:食物繊維が多いもの
胃に留まる時間が長くなるため、血糖値の上昇は穏やかです。血糖値の上昇が穏やかになると、空腹感も感じにくいので、ダイエット中には最適です。消化に良い食べ物を選ぶか、消化に悪い食べ物を選ぶかは、それぞれメリット・デメリットがあります。その時の体調によって決めましょう。
うどんのおなかにやさしい食べ方テク3選
最後に体調が悪くて、食べるために使えるエネルギーが少なすぎる時は、消化に良い食べ物であるうどんをますます消化によい調理法で食べることをおすすめします。
食べ方① 調理
消化に良いか悪いかは、調理法によっても決まります。例えば卵の場合、半熟卵からゆでたまごまで食べ方はいろいろですが、それぞれ消化時間が違います。
半熟卵(3分茹でたもの):90~105分
生卵:135~150分
卵焼き:165分
固ゆで卵:180分
うどんも消化に良い食べ物にしたい場合は、ゆで時間を長くし、柔らかく煮込んだ煮込みうどんにすることをおすすめします。薄力粉を使ったタンパク質の少ない小麦粉を使えば、より消化に良くなります。
ひとり暮らしの方の中には、毎日カップラーメンのそばやうどんを食べている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、いくらパッケージに「うどん」と書かれていたとしても、カップラーメンは消化が悪い食べ物です。
カップラーメンはお湯があれば作れるのでとても手軽ですが、完成するまでに麺を高温の油で揚げています。大量の油が入っているのは、容易に想像できます。当然ながら消化には時間がかかってしまいます。
消化が良い食べ物を食べたい時は、カップラーメンではなく、生麺や乾麺を選びましょう。
食べ方② 咀嚼
うどんは、つるつるとのど越しがよく、あまり咀嚼せずに飲みこんでしまいがちです。
しかし、炭水化物の消化には、唾液に含まれる分解酵素「アミラーゼ」が必要不可欠です。健康な腸を保つためには、よく噛んで分解酵素「アミラーゼ」とうどんをよく混ぜながら食べることが重要です。
食べ方③ 味付けとトッピング
うどんを少しでも消化しやすくするためには、胃腸への負担を減らすために薄味にしましょう。また冷たいうどんも消化が悪くなるので、胃腸がびっくりしない程度にあたためることをおすすめします。
また、トッピングとしていちばんおすすめなのは、「大根おろし」です。大根には消化酵素が多く含まれているので、胃腸の働きをサポートしてくれます。
まとめ
うどんとそばのうち消化に良い食べ物は、「うどん」でした。
その秘密は、原材料です。そばはそば粉、小麦粉のほかにもつなぎとして海藻や卵など、さまざまな食材が栄養バランスよく含まれていますが、うどんは小麦粉と塩と水だけとシンプルです。
うどんは、三大栄養素である、炭水化物、タンパク質、脂質のうちいちばん消化時間が短いとされる炭水化物の割合が多く、消化活動をじゃましません。究極まで消化時間を短くしたい場合は、調理法や味付け、トッピングにも工夫が必要です。例えば、塩分を少なくして薄味にしたり、柔らかくとけるぐらいまでゆでたり、トッピングに分解酵素が含まれる大根おろしを使うことも検討してみてください。
しかし、これは胃腸の調子が悪くて、負担をかけたくない時のはなし。
通常時は、炭水化物ばかりの食事だと血糖値を上げて、脂肪をため込みやすい体になってしまうので、胃腸が元気になってきたら蕎麦や硬くコシがあるうどんも食べましょう。
参考にしてみてね。